住宅ローンの返済が困難になった場合の選択肢として、任意売却があります。任意売却は市場価格に近い価格で売却できるため、住宅ローンが払えない状況に陥った場合に有効な手段のひとつです。
しかし、不動産の売却金額がローン残高を下回る場合、任意売却をした後も債務が残ってしまう点に気を付けなくてはなりません。
本記事では、任意売却後の残債務の取扱いや、競売との違いについて詳しく解説します。
任意売却の流れと残債務の支払いについて
任意売却とは、債権者の同意を得て不動産を売却し、その売却代金をローン返済に充てる方法です。しかし、不動産の売却金額がローン残高を下回る場合は残債務が生じます。
ここでは、残債務の分割返済や時効についてまとめました。
分割返済はできる?
結論から言うと、残債務の分割返済は可能です。債権者と交渉し、毎月の返済額や返済期間を決定できます。通常、以下のような条件で分割返済が認められることが多いです。
・返済額:1~5万
・担保:原則として無担保
分割返済を行う場合は、自身の収入状況を考慮した上で無理のない返済計画を立てることが大切です。
時効について
任意売却後の残債務には時効があります。時効期間は以下のとおりです。
・民間の住宅ローン:5年
・住宅金融支援機構の住宅ローン:10年
しかし、時効の成立を待つのは現実的ではありません。債権者は時効成立前に訴訟などの法的手段を取ることが多く、これにより時効が中断されるためです。
任意売却のメリット・デメリット
任意売却のメリット・デメリットは、以下のとおりです。
メリット
通常の不動産取引と同様に市場価格での売却が可能な点です。競売と比較すると、より高額での売却が期待できるため、残債務を最小限に抑えられます。また、競売では避けられない差押えの公示や物件情報の公開を避けられることから、プライバシーを守れるでしょう。
さらに、売却後の引越し時期についても買主と相談しながら決められるため、柔軟に対応できます。場合によっては、売却代金の一部を引越し費用に充てられるかもしれません。加えて、競売と比べて信用情報への影響も最小限に押さえられることから、将来的な金融取引への影響も軽減できます。
デメリット
任意売却時には、売却金額がローン残高を下回る場合に残債務が発生する可能性があります。ただし、この残債務については、不動産会社のサポートのもと、債権者との交渉により分割返済などの柔軟な対応が可能です。
また、最適な買主を見つけるまでに一定の時間を要する場合がありますが、売主の方は専門家のサポートを受けながら、新生活に向けた準備に専念することができます。
任意売却を成功させるためのポイント
任意売却を成功させるためのポイントとして、以下の2つが挙げられます。
早期の相談・対応
任意売却を成功させるためには、住宅ローンの返済が困難になった段階で、できるだけ早期に対応を開始することが大切です。まずは債権者に対して、返済が困難な状況と任意売却の意向を丁寧に説明することから始めましょう。
また、任意売却に特化した不動産会社や弁護士などの専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることも欠かせません。現在の市場価値を正確に把握し、売却価格の目安を立てることで、より現実的な計画を立てられるでしょう。また、権利証や住宅ローンの返済予定表などの必要書類を早めに準備しておくことで、スムーズに手続きを進められます。
売却価格について
任意売却における売却価格は、債権者によって最低売却価格が設定されます。債権者は市場価値を考慮しながら、回収可能な金額として最低売却価格を決定するため、売却を進める際は債権者とこまめに連絡を取りながら、その条件内で買主を探すことを心掛けましょう。
任意売却後の残債務が払えない場合は?
残債務の返済が困難な場合は、以下の選択肢があります。
自己破産
自己破産は、裁判所に破産を申し立て、債務を免除してもらう方法です。ほぼすべての債務が免除されるほか、比較的短期間で手続きが完了することがメリットとなります。一方、自宅を含むほとんどの財産を失うほか、社会的信用が低下するため、自己破産を行う際は慎重に検討することが必要です。
「任意売却」と「競売」の比較
似た言葉に「競売」がありますが、競売の場合は市場価格よりも低い価格で売られることが多いため、残債務が多く残ってしまいがちです。一方、ここまでにお伝えした任意売却であれば、市場価格に近い価格で売れることから、債務の圧縮につながります。
そのため、競売よりも任意売却のほうが所有者にとってより柔軟で有利な選択肢が取れる可能性が高いといえます。任意売却と競売の主な違いについて、下表で今一度確認しておきましょう。
利息の面
任意売却と競売では、利息の取り扱いに違いがあります。任意売却の場合は、早期に売却することで将来的な利息の発生を抑制できる可能性があります。
債権譲渡について
任意売却と競売のどちらの場合でも、残債が残った場合には債権譲渡される可能性があります。債権譲渡は、売却手続きの完了後に行われることもあります。
任意売却・競売の両方のケースにおいて、残債が残った場合、債権者は債権回収業者に債権を譲渡する可能性があります。これは、債権者が回収の効率化や専門的な回収手段の活用を図るためです。
ここで大切なのは、任意売却や競売の手続き自体が債権譲渡を決定づけるわけではなく、残債の有無や債権者の判断が主な要因となることです。債務者は、どちらの手続きを選択しても、残債がある限り債権譲渡のリスクがあることを理解しておく必要があるでしょう。
専門家へ相談するメリット
弁護士への相談
任意売却においては、法的な権利関係の確認が非常に重要です。弁護士に相談すれば、債権者との交渉を円滑に進められるほか、必要に応じて債務整理に関する適切なアドバイスを受けることもできます。また、売買契約書などの重要書類の確認も弁護士に依頼することで、安全に取引を進められるでしょう。
任意売却に特化した不動産会社への相談
任意売却に特化した不動産会社であれば、物件の市場価値を適切に査定し、効率的な買主探しをサポートしてくれます。また、売却手続きの進行管理や、引越しに関する様々なアドバイスも受けられます。専門知識を持った不動産会社のサポートを受けることで、スムーズな任意売却を実現できるでしょう。
任意売却後の生活再建に向けて
任意売却後の生活再建に向けて、次のことについても考えておきましょう。
新たな住まいの確保
任意売却後の住まいについては、様々な選択肢を検討することが大切です。賃貸住宅への入居を選択するケースが多いものの、状況に応じて実家での同居という選択肢を考えるのもよいでしょう。また、収入状況によっては公営住宅の活用を検討することもできます。最近では、比較的安価に住めるシェアハウスという選択肢も増えてきています。
家計の見直しとライフプランの再構築
生活再建に向けては、まず現在の収支バランスを詳細に見直すことから始めましょう。固定費や変動費を細かく分析し、不要な支出がないか確認することが重要です。場合によっては副収入の確保を検討するのもひとつの手でしょう。このような取り組みを通じて、将来的な住宅取得も視野に入れた長期的なライフプランを立てていくことが大切です。
任意売却後の残債務について
任意売却後に残債務が生じた場合、分割返済が可能であるため、債権者との交渉により返済条件を決めることができます。ただし、残債務の返済が困難に陥ってしまった場合は、自己破産などの法的手続きを検討する必要が出てくるでしょう。
また、任意売却と競売を比較すると、売却価格やプライバシー保護などの多くの面で有利になるケースが多いです。とはいえ、状況によって最適な選択は異なるため、専門家に相談しながら慎重に判断することが大切です。
テスコーポレーションでは、任意売却に関する豊富な経験と専門知識を持つスタッフが、お客様の状況に応じた最適なアドバイスを提供いたします。住宅ローンの返済でお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。
任意売却後に残債務が生じた場合、分割返済が可能であるため、債権者との交渉により返済条件を決めることができます。ただし、残債務の返済が困難に陥ってしまった場合は、自己破産などの法的手続きを検討する必要が出てくるでしょう。
投稿者プロフィール

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株式会社テスコーポレーション 営業部部長
宅地建物取引士・任意売却取扱主任者・競売不動産取引主任者・賃貸不動産経営管理士・マンション管理業務主任者
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